インプラントブログ

2010年4月23日 金曜日

歯科医にとってのインプラント 2010 4 24


立川駅前の工藤歯科 院長 歯科医師の 工藤英仁です。

インプラントは歯がない状態に対し外科的に歯となるものを顎骨に埋め込み歯を作り出す治療法です。

歯のないことによる不自由や喪失感を治療により、元の歯と近いもので補うことができ、不自由から解放させることができるならばそれは素晴らしく意義のあることだと考えられます。

また入れ歯で十分に咀嚼することができず、食べたいものを食べられなくて生活の楽しみが失われてた方がインプラントによって再び食べたいものを遠慮なくおいしく食べられるようになるとしたら、それは素晴らしいことでしょうし、これこそインプラント治療の最大のメリットでしょう。

しかしインプラントは歯の代わりになるものでありますが、歯のように歯根膜はないですし、異物です。

骨折した骨を整形外科ではチタンのスクリューで整復した位置でねじ止め固定します。インプラントはそれと同じ原理です。骨折した骨がついた後も固定のねじを残しておく場合もありますし、もう一度外科的に開いてねじを撤去する場合もあります。自分も実は学生のころに手を骨折したときのチタンのねじの固定が入ったままです。もう20年くらい経ちます。当時の担当の整形外科医師はスクリューは撤去しなければならないわけではない。撤去したい希望があれば撤去すると言われたのを覚えています。骨折したからか、ねじのせいかはわかりませんがたまに力をかけたときに違和感を感じることがありますが普段は全く何ともありません。運動も普通にしています。

歯科のインプラントは顎骨に固定されているのでいわば骨で咬むような状態です。
一方で、歯には歯根膜、歯の神経の歯髄、があり、ものを咬む瞬間のほんの一瞬間でこれらの組織が互いに微妙な相互作用をして咬み心地や咬合力を調整しているとされています。
歯でも歯髄―神経を抜いた歯と、神経をとってない歯でもその協調が少しかわり、神経をとった歯の方が神経のある歯と比べ強い咬合力で咬んでしまう傾向があるという報告があります。

骨で咬むインプラントにはそのような咀嚼の微妙な協調運動が生じない可能性が高く、咬み心地については 天然の歯と比べるとかなりの差があるものではないかと想像されます。

インプラントは歯髄(歯の神経)と歯根膜(歯周靱帯)がないことからきわめてユニークな「義歯」であるといえます。

もうひとつの大きなインプラントの問題点は外科処置であり、局所麻酔、歯肉切開、歯槽骨削除などが必要であり、隣接組織を障害するリスクのあることです。歯は削らなくて済むけれど、歯槽骨はインプラント体の歯根の堆積分削り取られます。そして削らなければならない歯槽骨もその量、形に余裕あることはまれで、すぐ近くに血管や神経、鼻の空洞などが控えているのです。神経を傷つければ麻痺が残ります。血管を傷つければ出血が生じます。鼻の空洞に傷がつけば、悪くすると蓄膿症になってしまいます。

インプラントの治療では残っている歯が長く使えるように、かつ、あらたに入れたインプラントの歯も長く使えるように、今現在残ってはいるが将来的に見通しはよくないと思われる歯は見切ってどんどん抜歯されてしまう傾向があります。
インプラントのために弱い歯を積極的に抜歯してしまうということが結構あるわけです。仕方のないこととはいえこの状態は好ましいことではないと感じます。抜歯を安易に進めることはつつしまねばななりません。
 
以上のようなことからも、「欠損」「歯がないこと」に対してはどんな患者さんにも「インプラントが最善」なのではありません。

歯が一本なくてもそのまま入れなくても支障の出ない場合もあります。ブリッジの方がよい場合もあります。部分入れ歯で十分の方もいます。

歯がない という状況にたいする治療法はひとつではないですし、インプラントが最高・最善であるわけではないです。
ブリッジや入れ歯、インプラント、移植、何もいれない という対応のそれぞれに、利点や欠点があるのです。

インプラントの強みは、劇的に強い咬合力をかけられる歯を作り出せることです。
そのことにより、残っている歯の咬合負担は減らすことができます。他の歯を削る必要もありません。
入れ歯もブリッジも歯を削る必要があり、また残っている歯の咬合負担が重くのしかかることは避けられません。

その患者さんにとってはどの治療方法がよりベターなのか 。患者さんの口腔内の状況(何本の歯がどの部位にどのくらいの支持で残っているのか、歯周病はどうか、神経があるのか、かぶせた歯なのか ・・・etc)、全身状態、ライフイベント、考え方、食生活、嗜好 いろんなことをすべて集めて総合的になにが望ましいかを歯科医は判断し、コンサルテーションをすべきと考えています。

歯科界も歯科医過剰供給、過当競争、虫歯の減少、人口減少、保険診療の低迷、などいろんな背景に影響されているのでしょうが、保険診療⇒自由診療(インプラント、審美歯科、矯正歯科)を強調するクリニックが急増しています。

インプラントは立派な口腔外科処置なのですが、インプラントをアピールしていながら歯科口腔外科は標榜しないというクリニックも多いです。口腔外科にいたからこそ自信をもってインプラントも手がけられると思ってる歯科医としては「?」と思います。
矯正治療は大学の歯科矯正学講座に5年以上は残って専門的に研修すべきことと考えていますが、矯正も審美歯科もインプラントも 全部やるという歯科医が増えています。とてもどの分野もこなせるとは考えられないのですが・・。
歯科医師が一人のクリニックで、インプラント 審美歯科 矯正歯科だけをアピールするところは、自分のクリニックの経営第一で仕事をしているのではないかと勘ぐってしまいます。

患者さんは矯正治療やインプラント治療を必ずしも望んでいない場合がむしろ多数派ではないかと感じます。たしかに状態が悪く、矯正もインプラントも行えれば歯科医の考える理想的な治療にはなりうるかもしれませんが、患者さんがそこまでの治療を本当に望んでいることなのか、治療することによるリスクや費用効果、治療期間も含めよく相談したうえでのことと思います。

どんな治療にしても、効果の限界もリスクもあることなので、とくにインプラントなどのように高額な外科処置で、何十年と長期に口腔内に残るものですし、周囲の歯の抜歯も考えなくてはならないような処置にはなおさら慎重に臨むべきと考えます。

 



投稿者 工藤歯科